砂漠の賢者 The Best BondS-3
最終章【愚行なる賢者の道標】
長い階段の終着点に程近い場所でその音は聞こえた。
小型の銃声。
耳に馴染んだ音に嫌な予感が胸をよぎる。
『エナっ!!』
階段までも響いてきたその声を聞いた瞬間、残りの階段を一気に掛け降りていた。
銃を構えて地下室へと足を踏み入れる。
息をつかせぬ速さで、エナを狙った男を撃つ。
本来ならば、それで全てが終わっていただろう。
けれど、彼の銃口が火を吹くことはなかった。
それは、一瞬の動揺。
ハセイゼンだけを視界におさめていたのなら、目的は為されたに違いない。
だが現実として彼は言葉を失い、そして最大の勝機を逸してしまった。
その視界に朱に染まった少女を捉えてしまった、ただそれだけのことで。
そして彼もまたその場に縛られる、こととなる。