砂漠の賢者 The Best BondS-3
*
ぱん、と破裂音が聞こえた。
「エナっ!?」
地下へと続く階段を引き摺られるように降りている途中。
遠くで張りのある年若い男の声が一人の名を呼んだ。
その途端、散々人に殴る蹴るの暴行をくわえた挙げ句『エナちゃんの靴の裏でも舐めて詫びろ』と動けない体を容赦なく引きずってくれた非情な男に突き飛ばされる。
否、すぐさま駆け出した男の姿――見た目でいえば美女――を見る限り突き飛ばしたわけではないのだろう。
置いてきぼりをくらったリゼは、くすくすと笑った。
「格好つけてましたけど、結局は同じ穴のムジナじゃないですか」
地下室へと姿を消した男に向かって声を投げる。
誰が撃たれたのか悟った瞬間のあの男の行動。
人を愚かだなんだと罵ってくれたが、つまるところ少女から目を離せない点では自分と大差無い、とリゼは尚も笑う。
壊したいのか護りたいのかという結論の相違はあれど、それだとて表裏一体のこと。
「さて、と……」
突き飛ばされた衝撃で座り込んでしまったリゼは、肩を壁に押し当てるようにして立ち上がった。
ハセイゼンは父親ながら、卑劣な男だ。
莫大な資産を守ってきた為か、血も涙も無い。
相手が寝れば寝首を掻き、背を向ければ容赦無く刃を突き立てる。
そんな人情とは最もかけ離れた場所に位置するハセイゼンから、あの男はどうやって少女を護ろうというのか。
全身の打撲に肋骨数本の損傷。
加えてご丁寧に利き腕の関節も外された状態では階段を一段降りるだけでも体は悲鳴をあげるが、それでも此処でただじっとしていて見逃すには余りに勿体無い一幕だ。
是が非でも、事の成り行きを見なければならない。
幸い、地下の動物収容施設から漏れる光はすぐ其処だ、気が滅入る程の距離でもない。
足の骨が無事で良かった、とリゼは光目指して一段、また一段と出来うる限りの速さで下り始めた。
階段を降りきって光が目に飛び込んだ時、リゼの目に映ったのはジスト同様、痛みに苦しむ少女の姿だった。
肩からも腿からも血を流し、額に珠のような汗を浮かばせて顔を苦痛に歪めるその少女を見た瞬間、足元から脳天に突き抜けたのは劣情という快感だった。
ぱん、と破裂音が聞こえた。
「エナっ!?」
地下へと続く階段を引き摺られるように降りている途中。
遠くで張りのある年若い男の声が一人の名を呼んだ。
その途端、散々人に殴る蹴るの暴行をくわえた挙げ句『エナちゃんの靴の裏でも舐めて詫びろ』と動けない体を容赦なく引きずってくれた非情な男に突き飛ばされる。
否、すぐさま駆け出した男の姿――見た目でいえば美女――を見る限り突き飛ばしたわけではないのだろう。
置いてきぼりをくらったリゼは、くすくすと笑った。
「格好つけてましたけど、結局は同じ穴のムジナじゃないですか」
地下室へと姿を消した男に向かって声を投げる。
誰が撃たれたのか悟った瞬間のあの男の行動。
人を愚かだなんだと罵ってくれたが、つまるところ少女から目を離せない点では自分と大差無い、とリゼは尚も笑う。
壊したいのか護りたいのかという結論の相違はあれど、それだとて表裏一体のこと。
「さて、と……」
突き飛ばされた衝撃で座り込んでしまったリゼは、肩を壁に押し当てるようにして立ち上がった。
ハセイゼンは父親ながら、卑劣な男だ。
莫大な資産を守ってきた為か、血も涙も無い。
相手が寝れば寝首を掻き、背を向ければ容赦無く刃を突き立てる。
そんな人情とは最もかけ離れた場所に位置するハセイゼンから、あの男はどうやって少女を護ろうというのか。
全身の打撲に肋骨数本の損傷。
加えてご丁寧に利き腕の関節も外された状態では階段を一段降りるだけでも体は悲鳴をあげるが、それでも此処でただじっとしていて見逃すには余りに勿体無い一幕だ。
是が非でも、事の成り行きを見なければならない。
幸い、地下の動物収容施設から漏れる光はすぐ其処だ、気が滅入る程の距離でもない。
足の骨が無事で良かった、とリゼは光目指して一段、また一段と出来うる限りの速さで下り始めた。
階段を降りきって光が目に飛び込んだ時、リゼの目に映ったのはジスト同様、痛みに苦しむ少女の姿だった。
肩からも腿からも血を流し、額に珠のような汗を浮かばせて顔を苦痛に歪めるその少女を見た瞬間、足元から脳天に突き抜けたのは劣情という快感だった。