砂漠の賢者 The Best BondS-3
「……血の繋がりがなくても、息子ってことじゃねェか。それのドコが飼われてるなんて話になンだよ!?」
見るからに気性の熱そうな男の言葉にリゼは嘲笑で返す。
「言ったでしょう? ハセイゼンはこの体に流れる血が欲しかったんですよ。星読(ホシヨミ)と呼ばれる血が、ね。まあお陰で今まで生き延びてこられたわけですが」
それさえなければ、奴隷としてぼろ雑巾のように使い捨てにされていたことだろう。
それさえなければ、あのような悲劇も起こらなかったのかもしれないけれど。
あの、ような――。
過去に戻りそうになった意識を繋ぎとめたのは少女の声。
「星読……!?」
「おや、ご存知ですか?」
過去から引き剥がされたことに感謝しつつ、リゼはエナの博学ぶりに感嘆の声をあげた。
それは、この世界にはもう存在しない種族だ。
否、実際存在していたのかどうかも怪しい。
なぜならば今、この世界において百年よりも前の文献はほとんど無いし、少なくとも現存する文献に星読などという言葉は一切出てこないのだ。
「まあ、本当のところはわかりませんよ。父も母も普通の人でしたから。私自身にも、何の力もありませんし」
それでもハセイゼン家という血脈よりも、ハセイゼンという家の名前に固執した男はこの血を欲した。
星の流れを読み解き、未来を見るというその血でハセイゼン家を安泰とするために。
当の本人が子を成せぬ体だったことも幸いし、唯一の息子としてそれなりに恩恵に与(アズカ)ったのも事実で、だからこそ此処までこうして大人しくしてきたわけだが。
「……でも、ハセイゼンはあんたを息子として、扱ってた」
そうでしょ? とも言いたげな同意を求める言い方に否は無い。
確かにそうだ。
ハセイゼンはある日を境に自身をまるで本当の息子のように扱いだした。
「なのに、なんで? 殺す理由なんて何処にも、無い!」
「貴女が、そう望んだんじゃありませんか」
間髪入れぬ言葉に少女は絶句した。
「あたしが……望んだ?」
わかってはいないのか。
わかっていると思っていたのだが。
「死ねないと思ったでしょう? だから、殺しました。まあ私も自由になりたいと思っていたので丁度よかったんですが」
見るからに気性の熱そうな男の言葉にリゼは嘲笑で返す。
「言ったでしょう? ハセイゼンはこの体に流れる血が欲しかったんですよ。星読(ホシヨミ)と呼ばれる血が、ね。まあお陰で今まで生き延びてこられたわけですが」
それさえなければ、奴隷としてぼろ雑巾のように使い捨てにされていたことだろう。
それさえなければ、あのような悲劇も起こらなかったのかもしれないけれど。
あの、ような――。
過去に戻りそうになった意識を繋ぎとめたのは少女の声。
「星読……!?」
「おや、ご存知ですか?」
過去から引き剥がされたことに感謝しつつ、リゼはエナの博学ぶりに感嘆の声をあげた。
それは、この世界にはもう存在しない種族だ。
否、実際存在していたのかどうかも怪しい。
なぜならば今、この世界において百年よりも前の文献はほとんど無いし、少なくとも現存する文献に星読などという言葉は一切出てこないのだ。
「まあ、本当のところはわかりませんよ。父も母も普通の人でしたから。私自身にも、何の力もありませんし」
それでもハセイゼン家という血脈よりも、ハセイゼンという家の名前に固執した男はこの血を欲した。
星の流れを読み解き、未来を見るというその血でハセイゼン家を安泰とするために。
当の本人が子を成せぬ体だったことも幸いし、唯一の息子としてそれなりに恩恵に与(アズカ)ったのも事実で、だからこそ此処までこうして大人しくしてきたわけだが。
「……でも、ハセイゼンはあんたを息子として、扱ってた」
そうでしょ? とも言いたげな同意を求める言い方に否は無い。
確かにそうだ。
ハセイゼンはある日を境に自身をまるで本当の息子のように扱いだした。
「なのに、なんで? 殺す理由なんて何処にも、無い!」
「貴女が、そう望んだんじゃありませんか」
間髪入れぬ言葉に少女は絶句した。
「あたしが……望んだ?」
わかってはいないのか。
わかっていると思っていたのだが。
「死ねないと思ったでしょう? だから、殺しました。まあ私も自由になりたいと思っていたので丁度よかったんですが」