砂漠の賢者 The Best BondS-3
「……ムカつくな。アンタ」
肩に置かれた手。
それを払いのけてゼルは言う。
「……おとなしく待っててやるよ」
オレはそんなに頼りねェかよ、という言葉は喉の奥で止めた。
肯定も否定もされたくはない。
「エラそうな口叩くね、お前」
「るせェ。さっさと行きやがれ」
追い払うように手をひらひらさせる。
「はいはーい。……姫ー! 待ってろよー! ジストさんとその下僕が行くからねー!」
「誰が下僕だっ! おいコラ! 待てって! 無視か! こン魔王野郎ー!!」
何だかんだで、結局ゼルはジストの後を追った。
待ってろと言ったジストだが、ゼルが距離を縮めることを止めはしなかった。
代わりに、一つ二つ嫌味を吐く。
群青と雲を染める茜が水の上の絵の具のように調和し広がっていく。
それは美しくもありながら、彼らの心中にある一抹の不安を映し出しているようでもあった。
エナは台風の目のような女だから。
彼女は彼女を中心に、全てを巻き込んでいく。
雲の多い空を見上げ、ゼルはふと思った。
雨が、降るかもしれない……――。
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