砂漠の賢者 The Best BondS-3
「なにか!? たまにしか来ない客は客じゃねェってのか!」
マリアがその場を収めに近寄るが、ああなってはどうしようもない。
追い出す以外に方法は無いだろう。
「ああ、あのお客はん達ねぇ。いつかこうなるんとちゃうかとは思ってましたんやけど……」
ルカが呆れた口調で呟いた。
騒ぎに慣れている口振りだ。
「三月(ミツキ)に一遍位来はるんですけど、呑み方もそう綺麗ではあらしまへんし、御代払いもちょいと問題あるんですわ」
ルカは口元に手をあてて、ほう、と息を吐いた。
「なのに上の席に座りとうて時たま、ああやって愚図るんですわ。あないに声荒げはったんは初めてやけど」
愚図ると言えば聞こえは可愛らしいが、当の男達は酔いも手伝って目を血走らせている。
「ジストはん、堪忍しておくれやす。こない騒がしゅうなってしもて」
頭を十五度程下げて謝るルカに気にするなと声を掛けて立ち上がる。
「お手水(チョウズ)です? もう少し待たれた方がよろしいんちゃいますやろか…」
気ぃ立ってるお人に近付いてもいいことありゃしません、とルカは言ったがジストはそんな言葉にはお構いなしにテーブルから離れ、騒がしい一角へと向かった。