不良リーダーの懸命なる愛 〜プール編〜
「すごいっ!!これがアクアランド!!」
人がごった返している中、私は大きな建造物に足をとめて魅入ってしまった。
思っていたよりも高くそびえ立つソレは、さすが県内二位のプールと謳われるだけあった!
「入場口はアッチだな。…ほい。咲希の分のチケット。」
と、霧島くんがアクアランドのチケットを一枚私に渡してきた。
「ありがとう…!」
「ん。……って、俺がお礼を言わなきゃいけねえよな!ありがとな、咲希。誘ってくれて嬉しかった。」
「……っ!ううん。こ、こちらこそ…。」
わゎ!なんだろ!?
霧島くんの顔がまともに見れないよ~!
全部お見通しだったんだと気づいたら、なんだか全身がカアッと熱くなってきてしまったのだ!
あんなに必死に隠そうとしてた私が阿保みたいに思えてくるよ!とほほ。
「それにしてもスゲー混んでんな。咲希、俺から離れんなよ?」
「は、はいっ!!」
きゅっと握られた手はとても力強くて、とても頼もしくて、
私はそれだけで胸がいっぱいになってしまった。
無事に入場できた私達は、それぞれ男女別々の更衣室に向かった。
「じゃ、出てきたところで落ち合おうな。」
「うん!じゃあまたね?」
そして更衣室に向かう霧島くんは、手をひらひらと軽く振りながらカーテンの向こう側へと消えていってしまった。
「行っちゃった…。」
なんだかんだで霧島くんと一緒にプールへ来ちゃったよ!
「でも、本当にこれで良かったのかな…。」
私の心の中にはまだモヤモヤが残っていて、今日の快晴にはとても不似合いだった。
だって、本当に霧島くんはここに来たかったわけじゃないと思う。
初めての彼氏彼女としてのデート。
彼との初めてのプール。
でもそれを満足しているのは私だけじゃないのかな……?
ぽつんと一人、私はしばらく閉ざされたカーテンを見つめていた。