不良リーダーの懸命なる愛 〜プール編〜


「あ!おねえちゃん!そのタコ、しおりと同じだね!」


「…え?」



隣から甲高い声が飛んできたので横を見ると小さな女の子がちょこんと座ってこっちを見上げていた。



「見て!しおりのタコといっしょだよ?」


「あ…!本当にそうだね!一緒だね!」



5歳くらいの小さな女の子が私の隣に姿勢よく座って話しかけてきた。



その女の子もタコの浮き輪を前に抱えて楽しそうに笑顔を弾ませている。




可愛い!


私とおそろいなんて!




…………ん!?



おそろい?




「ね、ねえ?しおり…ちゃん?あの、お父さんとお母さんはどこにいるの?」


「ママはおうちでおるすばん。パパはいまトイレに行ってるよ!」


「え!?じゃ、じゃあいま一人なの?」


「うん!」




……………。




忍び寄る男たち。



“タコの浮き輪”を持った一人の可愛らしい幼女。




これって、




危ないんじゃっ!!!




人攫いの現場に私はいる!そう直感した!!



「し、しおりちゃーん!!パパが戻ってくるまでお姉ちゃんと一緒にいよっかー!!」



と、例の3人の男の人達に聞こえるようにわざと大声を出して笑顔をふりまく!




「な、なんだ?!一人だと思ってたのに家族と来てたのか?」


「チッ!なんだよ!もう少し早く声かけてたらな…。」


「なあ、どうすんだよ。次探すか?あれじゃ手の出しようもねぇぜ。」



そんなひそひそ声がすぐ近くから聞こえてきて、とりあえずホッと胸をなでおろす私。

< 86 / 98 >

この作品をシェア

pagetop