不良リーダーの懸命なる愛 〜プール編〜
ご褒美
「……………。」
「……………。」
青空の下で私と霧島くんは長いようで短い時間を、言葉を交わさずにただお互いの体温を感じていた。
私の足元にはさっきまで胸に抱いていたタコさんが転がっている。
霧島くん…。
やっぱり助けに来てくれた。
どんな相手でもいつも私のために彼は来てくれる…。
そんな彼を凄く愛おしく思うと、胸の奥がきゅっとなった。
「…咲希。」
「は、はい!」
「怖がらせてごめんな。」
「え…?」
「さっき喧嘩になるんじゃねぇかって焦っただろ?」
あ…。
霧島くん、気づいてくれてたんだ。
私が不安に思っていた事を…。
「俺も脅かすことはしたくなかったけど、ああいうタイプはこっちが強いって見せればすぐ逃げるから、やむを得なかった。心配させてごめんな。」
と、彼の切なく優しい声がぽつりぽつりと降ってくる…。
「う、ううん!霧島くんが来てくれて本当に嬉しかったよ?…助けてくれてありがとう!」
「ん。良かった。無事で。」
あ…。
やっと笑ってくれたみたい。
抱きしめられているから表情はわからないけれど、
その証拠に彼の声色がとても柔らかくなったのと、肩の力が一気に抜けたからだ。
ところであの人達、霧島くんの名前知っていたみたいだったけど、
霧島くんとどんな関係があるのかな…?
先ほどの霧島くん達のやり取りを思い出した私は、そんなことがふと疑問に浮かぶ。