【超短編 11】じゅっこ
じゅっこ
「ふぅ」
僕は小さなため息をつくと、屋上のベンチに腰をかけた。
人工芝の植えられたデパートのだだっ広い屋上には、営業をサボっているサラリーマンや高校生、主婦やカップルなんか日向ぼっこをしている。
平日の昼間でもそれなりに人はいるものだ。
胸のポケットからタバコを取り出す。口にくわえて灰皿を探そうとすると、背中の壁に禁煙と書かれた張り紙を見つけて、もう一度小さなため息をつき箱の中に戻した。
「結婚してから、いいこと10個あった?」
と、3階の女性服売り場のバーゲンで今頃揉みくちゃになっているであろう妻に、一昨日聞かれたことを思い出した。
「なんだよ、急に?」
食器を洗っている彼女がテレビを見ていた僕に突然そんなことを言い出した理由について、彼女は一切答えなかった。
「いいから…あった?」
そうだな、と僕はとりあえず彼女の質問に答えるべく頭を働かせようとしたが、その質問の意図することのほうが気になって、何一つ思い浮かばなかった。
「ないの?」
と洗い物を終わらせた彼女が僕の横に座り、いよいよ本当に困った僕は
「細かいことなら10と言わず、100でも千でもあるけどね」
と具体例を挙げないで済む答え方に逃げた。
僕は小さなため息をつくと、屋上のベンチに腰をかけた。
人工芝の植えられたデパートのだだっ広い屋上には、営業をサボっているサラリーマンや高校生、主婦やカップルなんか日向ぼっこをしている。
平日の昼間でもそれなりに人はいるものだ。
胸のポケットからタバコを取り出す。口にくわえて灰皿を探そうとすると、背中の壁に禁煙と書かれた張り紙を見つけて、もう一度小さなため息をつき箱の中に戻した。
「結婚してから、いいこと10個あった?」
と、3階の女性服売り場のバーゲンで今頃揉みくちゃになっているであろう妻に、一昨日聞かれたことを思い出した。
「なんだよ、急に?」
食器を洗っている彼女がテレビを見ていた僕に突然そんなことを言い出した理由について、彼女は一切答えなかった。
「いいから…あった?」
そうだな、と僕はとりあえず彼女の質問に答えるべく頭を働かせようとしたが、その質問の意図することのほうが気になって、何一つ思い浮かばなかった。
「ないの?」
と洗い物を終わらせた彼女が僕の横に座り、いよいよ本当に困った僕は
「細かいことなら10と言わず、100でも千でもあるけどね」
と具体例を挙げないで済む答え方に逃げた。