死と憤怒
「思い出した。そうだ。はじめから……」
「ヴォルフラム?」
「——……あの日、も…………」
震える身体を抱え、頭を埋め尽くす記憶に抗おうとする様子に二人は顔を見合わせた。
『知ってるでしょう?貴方の大事なひとは皆死んでしまうのよ。』
「ヴォル……」
名前を呼びかけようとしたメアリーをローレンスが静かに牽制した。
「話してくれ。納得した上で、お前の願いを聞きたい。訳が解らないままでお別れなんて……寂しいだろ。」
困ったように笑うとローレンスはヴォルフラムをまっすぐに見た。
「俺は、」
ヴォルフラムは静かにローレンスを見た。
そして、メアリーを見る。
「生まれる前……もう、俺自身はあまり覚えていない。」
僅かな記憶を辿るように言う。
「その時の名は、サタン。」
そこだけははっきりと解った。
「嘗て大罪を犯した者として、誰かに仕えていた。……そして、そのひとから……よく思い出せない。だが、何か、頼まれた。そして、その中でタナトス、の大事なひとを……」
自分でも解らなくなってきたのか、そこで話は止まってしまった。
少し考えるも、ローレンスは黙って聞いていた。
メアリーは話したそうだが我慢することにした。
「タナトスと俺は何かを約束していた。多分、誰かを守ること。」
「それは仕えていた人?」
「違う。もっと、近くにいるひとだ。」
ヴォルフラムはメアリーに首を振る。
「その約束を違えた。タナトスを裏切った。」
「だから、“生まれる前から罰を受けるべき者”なのか。」
ローレンスにヴォルフラムは頷く。
“タナトス”という人物は知らないが、恐らく尋ねてもわからないと言うだろうと思い、訊かなかった。
「その罰は俺だけが受ければ良い。」
そう呟くと顔を手で覆う。
どうしたらいいかを考えている様子だ。
「その“タナトス”ってひとに謝れば許して貰えないの?」
「無理だ。」
「やってないのにどうしてわかるのよ。」
メアリーは膨れっ面をする。
ローレンスはヴォルフラムの様子を静かに見る。
「死ねば、全てがおさまるのだろう。」
願うように呟いた気がした。
そうではない。
それでも、そうであって欲しいようだった。
「すまない。」
はっきりと言った言葉は拒絶に聞こえる。
「生まれる前の罪だなんて、貴方に関係ない」
「メアリー。」
ローレンスは静かに遮る。
「お前が言いたいことは大まか解った。」
「ヴォルフラム?」
「——……あの日、も…………」
震える身体を抱え、頭を埋め尽くす記憶に抗おうとする様子に二人は顔を見合わせた。
『知ってるでしょう?貴方の大事なひとは皆死んでしまうのよ。』
「ヴォル……」
名前を呼びかけようとしたメアリーをローレンスが静かに牽制した。
「話してくれ。納得した上で、お前の願いを聞きたい。訳が解らないままでお別れなんて……寂しいだろ。」
困ったように笑うとローレンスはヴォルフラムをまっすぐに見た。
「俺は、」
ヴォルフラムは静かにローレンスを見た。
そして、メアリーを見る。
「生まれる前……もう、俺自身はあまり覚えていない。」
僅かな記憶を辿るように言う。
「その時の名は、サタン。」
そこだけははっきりと解った。
「嘗て大罪を犯した者として、誰かに仕えていた。……そして、そのひとから……よく思い出せない。だが、何か、頼まれた。そして、その中でタナトス、の大事なひとを……」
自分でも解らなくなってきたのか、そこで話は止まってしまった。
少し考えるも、ローレンスは黙って聞いていた。
メアリーは話したそうだが我慢することにした。
「タナトスと俺は何かを約束していた。多分、誰かを守ること。」
「それは仕えていた人?」
「違う。もっと、近くにいるひとだ。」
ヴォルフラムはメアリーに首を振る。
「その約束を違えた。タナトスを裏切った。」
「だから、“生まれる前から罰を受けるべき者”なのか。」
ローレンスにヴォルフラムは頷く。
“タナトス”という人物は知らないが、恐らく尋ねてもわからないと言うだろうと思い、訊かなかった。
「その罰は俺だけが受ければ良い。」
そう呟くと顔を手で覆う。
どうしたらいいかを考えている様子だ。
「その“タナトス”ってひとに謝れば許して貰えないの?」
「無理だ。」
「やってないのにどうしてわかるのよ。」
メアリーは膨れっ面をする。
ローレンスはヴォルフラムの様子を静かに見る。
「死ねば、全てがおさまるのだろう。」
願うように呟いた気がした。
そうではない。
それでも、そうであって欲しいようだった。
「すまない。」
はっきりと言った言葉は拒絶に聞こえる。
「生まれる前の罪だなんて、貴方に関係ない」
「メアリー。」
ローレンスは静かに遮る。
「お前が言いたいことは大まか解った。」