死と憤怒
「お、おい。大丈夫かよ。」
普段は話さない生徒に言われたくらいだから、相当ひどい顔をしているのだとヴォルフラムは理解した。
「もう、平気だ。」
優しい口調の返答にそれを聞いた他の生徒が驚く。
「雰囲気変わったな。」
そう言ったのは“他人子”だと嘲笑った生徒だ。
「……もう、虚勢を張る必要がないからな。」
そう答えると隣に居たローレンスが咳払いをする。
「却って気が狂う。」
「どういうことだ。」
ヴォルフラムは心外そうだ。
「優しい雰囲気がお前らしく無さ過ぎて。」
「優しくはない。」
ローレンスの意見を否定する。
「これ以上変われないし変わることもない。だが、少し……肩の力を抜いただけだ。いくら気を張っても現状は変わらない。」
冷静に言う。
「未だ、迷惑をかけるかも知れない。不完全だ。それでも、俺の味方でいてくれる。そうだろう?」
「お、おう。」
真剣に言うヴォルフラムにローレンスは頷く。
「皆も。」
ヴォルフラムが入ってきた時とは別の意味でぎょっとした生徒を見回す。
「……信じる。」
そう言った彼の表情は柔らかかった。
「最初から疑い続けていたことの愚かさに、やっと気付いた。」
「そうか。」
不思議そうな驚いた表情をしていたローレンスだったが、ヴォルフラムなりの成長なのだろうと思った。
「気づいてくれて良かった。」
そう言って笑いながらヴォルフラムの肩に腕を回し、わしゃわしゃと頭を撫でた。
「!!」
驚いたヴォルフラムがじたばたしている。
「ってか、おせぇんだよ!!」
そう言うと撫でた手を退ける。

学校が終わり、帰宅する。
ローレンスもメアリーもヴォルフラムの心配をしていた。
「ひとりで大丈夫か?」
「あぁ。それに、父上も居る。もうじき帰ってくる。」
そう答えると扉を閉めた。
メアリーは心配そうだ。
「行こう。」
そう言っても暫くはじっとしていた。
少しして、動き出すと向こうからヴォルフラムの父親がやってきた。
「こんばんわ。」
「……」
かなり苛立っている様子で会釈して無言で去る。
二人は顔を見合わせた。
「精神的に参っている話は聞いたけど、今のはおかしいわね。」
「何かあるんじゃ」
“ガッシャーン!!”
ローレンスの声をガラスが割れる音が遮る。
「!!」
二人は急いで中へ入った。
「ヴォルフラム!」
「来るな!!」
部屋から声がする。
< 14 / 19 >

この作品をシェア

pagetop