死と憤怒
地面に当たった拳が大地を割る。
直ぐにアズライールへ次の攻撃を繰り出す。
「眠れ。」
サタンはアズライールの首を絞めると、折れた剣先を突き刺した。
眩い光と共にアズライールは消えた。
「サタン。」
「タナトス。」
暫し睨み合うとタナトスはサタンへ掴みかかる。
「殺してやる。」
「輪廻を止められるのならば、構わない。」
「貴方があの子を殺したくせに!!!」
タナトスは鎖でサタンを貫く。
「何度でも失い、何度でも死んで、何度でも絶望するがいいわ。」
そう言葉を吐く。
「輪廻は終わらない。」
「もう、ヴォルフラムというものは居ない。輪廻は無い。」
「いいえ。」
タナトスは手を振り上げる。
「終わらない。」
その言葉と同時に、辺りの景色が変わった。
叫びと嘆きの世界。
そこが地獄界であることは認識するのに時間がかからなかった。
「起きなさい。」
タナトスがそう言って血の海から骸を引き上げた。
「そう簡単に、私が許すとでも?」
嘲笑すると、骸が灰になり舞い上がった。
「器を戻す。貴方の思うようにはならないわ。」
タナトスはサタンに歩み寄る。
「返してもらうわ。」
「——!!」
鎖は再びサタンへ向かう。
拘束すると、タナトスがサタンに触れた。
「おばかさん。」
そこで、視界が暗くなった。

目覚めた世界は地上。
傍らには器であるヴォルフラムが居た。
「私の力が半減したけれど……まぁ、大目に見てあげる。」
「そこまでして、輪廻を続けたいのか。」
「そうよ。それが貴方の罪。」
サタンにタナトスが答える。
「許さない。」
そう言い残して消えた。
「……っ、」
傍らに居たヴォルフラムが目覚める。
訳がわからない様子で辺りを見回している。
(これが、始まりか。)
サタンはヴォルフラムを見据えた。
何か言おうとして、言うのをやめる。
「済まない。」
そう言って消えた。

何千何万回と繰り返される輪廻。

それは罰というにはあまりにも残酷で
愛したものを喪うのに、愛することを拒めない孤独を永久に抱く。

いっそ、何も手に入れなければ。

そう思えども、彼は手を伸ばす。

愚かだと誰かがわらう。

「何度でも失い、何度でも死んで、何度でも絶望するがいいわ。」

呪う言葉は輪廻へと誘う。
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