きみが教えてくれた夏
びしゃっ。


ばしゃっ。




「ふぅ…」


少し長いため息が漏れた。
流石に足も疲れてきてしまった。
海音はまだまだ余裕そうだけど。



「疲れたかぁ?」



海音が私の方へ駆け寄ってきた。
そして私の顔を覗き込む。
私はどうもこれが苦手だ。
こうされると胸がぎゅって苦しくなる。



「大丈夫。まだやれるよ」



片腕をぽんぽんと叩いてみるも海音は私の頭に手を乗せて。



「休憩、しよか」



そして赤ん坊をあやすように私の頭を二回、ぽんぽんと叩いた。


いつもはあんなに子供っぽいくせに、たまにこんな風に大人になられては困る。




「未来、ついでに服乾かすぞ〜」



海音はもう木陰に入り、自分の服を脱いで木の枝にかけていた。



「はーい」



……?


…ちょ、ちょっと待ってよ…?



「私も…脱ぐの?」



そうだ。
海音は男だから構わないのだが、仮にも私は女の子だ。
裸になるのは無理があるでしょ。



「ん、そうだが?」



なんの容赦もなくにこっと笑う海音。



「は!?わ、私、女だけど!?ねぇ、海音とは違うんだよ!?」



脱がない。


この手はどうだろうか?


そう考えてはみるが。



「くしゅっ!」



全身を駆け巡る寒気に打ち砕かれた。
夏とは言っても昼は過ぎて今はちょうど五字頃だ。
風も少しばかり冷たくなっている。


あぁ、夏風邪だけ引きたくない…。
こんなとこまで来て、暑い中寝てるなんてそんな悪夢みたいなことは考えたくもない。



身震いをしたその時。
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