きみが教えてくれた夏
ぽふっ。


私の頭上を暖かい何かが包んだ。
目の前が真っ暗で何も見えない。


感じられるのは海音の匂いと海音の手。
私の頭を包む何かの上から撫でられる。


どうやら、タオルみたいなものみたいだ。
暖かくて、冷たい体には心地良い。



「嘘だって、にしても…風邪引いたらいかんからなぁ。まぁ、服も心配すんな、こうなると思ってお前の分は自転車のかごに積んである」



もふもふ。


やっと、視界が開けた。



淡いオレンジ色のタオルだった。
夕焼けみたいな太陽の色。
私物まで太陽みたいだとは運命だとしか思えない。



「ほれ、みーらいっ」



海音はそう言うと同時に袋を投げてきた。
こういうのには慣れていないからあたふたしてなんとか落ちる寸前のキャッチとなってしまった。


中を開けると白い半袖と半ズボンが入れてあった。 



「俺はあっち向いてるから着替え終わったら声掛けてな」



海音はくるりと後ろを向くと目を瞑って木を背もたれに座った。


私は濡れた服を脱ぐと白い半袖のシャツと半ズボンを着る。
サイズはぶかぶかで、袖は長いし、半ズボンに至っては長ズボンみたいだ。
そして、ふわりと海音の匂いがする。



これが彼シャツと言うのだろうか。
そう思うとまた心臓が煩くなった。
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