きみが教えてくれた夏
「あ、危ねえなぁ!」 



さっきとは違うちょっと焦った声。
あたふた。
ばたばた。



「私のこと馬鹿にしたでしょー?」



少し意地悪く言うと海音は困ったようにこう言う。



「そんなつもりじゃねえんだけどなぁ。未来はそう感じちまったかぁ?俺さ、言葉で伝えるの苦手なんだぁ」



そんなマジなトーンで言わないでよ。
なんか私の方が悪いみたいじゃないの。


海音は本当に真っ直ぐなんだと思った。
いつだって、なににだって真剣に向き合うんだなって。


海音。
きみは私なんかよりずっと言葉で伝えられているよ。
きみの一言、一言が私の心に伝わって心臓が痛いんだよ。



「ばか…」



これぐらいしか言えないじゃない。
憎まれ口を叩いても真面目に返されてしまったらこうするしかないじゃない。



「ははっ。未来は面白いなぁ」



そうやってまた笑って。
煩い、煩い。
なんなのよ、きみって人は。
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