きみが教えてくれた夏
辺り一面のひまわり。


黄色の花が咲き乱れキラキラと輝いている。
太陽の方に伸びるように。



もう、また言葉に困るじゃない。
どうしてきみはこんな場所を知ってるの。



「綺麗だろ?」



自転車に股がったまま。
私の方に顔を向けて言った。



綺麗…。
なんでなんで。
昨日といい、今日といい。


私は自転車を降りてひまわり畑へと駆け寄る。


くんくん。


くんくん。


夏の匂いとひまわりの香り。
混ざり合っていいハーモニーを生み出している。


私はくるりと振り返って。



「海音!すっごく綺麗だね!」



なんて笑いかける。
そしたらなぜか海音は固まって。
鼻の頭をまた擦りながら。



「だろぉ!東京にはこんなひまわり畑はねえと思ってな、見せたかったんだ」



そう言うと海音も自転車を止めて私の方へ駆けてきた。



「私、ひまわりって生で見るのは初めてかも」



ひまわりの花に触れてみると案外ガッシリしていて。
ちゃんと生きてるんだって感じた。


例え感情が無くとも確かに生きている。
道端に咲く花に私はこんな思いを抱いたことが今まであっただろうか。


多分、こんな思いが芽生えるのはこの場所に居るからだと私は思う。



花も。


空気も。


どんな生き物だって今を生きているんだ。
それがどんなに短かろうと、長かろうと。
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