きみが教えてくれた夏
ゆらゆら。  


丘の上からだと少しだけ、空に近づいた気がするな。


ひこうき雲が遠い空で流れる。
こんな田舎の空にも飛行機は飛ぶんだなって思った。


空はどこまでも続いている。
私が知らない景色も知っている。


しばし、空を眺めていると後ろからぽんっと肩を叩かれた。



「これで競争しねえか?」



手にはどこから拾ってきたのだろうかダンボールが二つ。



「これで競争って、まさか、ここを下るつもり!?」



この丘は緩やかな方だが勢いがついてしまえばどれくらいのスピードが出るかは分からない。


もしかしたら怪我をするかも知れない。
いや、すると思う。


この人はなんでこうも危険なことをやろうと言うのか。



「なあ、楽しそうだろ。未来!」



にっこり笑って。
絶対に私には楽しいとは思えないだろう。
だけど、頷いて。



「あんまりスピードは出さないよ?」



なんて。
言い訳をしながらダンボールを受け取った。
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