きみが教えてくれた夏
「よーい、ドンッ!」


ザザッ。


短く、草の擦れる音。
今度は勢いよく飛び出した。


海音より数メートル近い地点からのスタートだ。


だから海音より少し早いだろうか?
まだ私の前に海音の背中は見えない。


これは私のリードか?


これなら勝てるかも…!



私は勢いに身を任せ風を切るようにダンボールを左へ右へ前方へ。


グングンと前へ進む。
夏の暑い風も今では涼しく感じる。


髪が揺れる。
服が揺れる。



ザザッ。


ザザァッ。




ザァァァーッ。



だんだんゆっくりになっていく。
もうすぐゴールだ。


序盤、リードしているかと思っていたが海音はすぐに横に並んできた。


これはもうどちらが勝つかは誰にも分からない。
だけど、これすなわち、私にも勝つチャンスはあるという訳だ。



私は最後の力を振り絞って前へとダンボールを傾けてスピードを最高速度にした。
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