きみが教えてくれた夏
「あれ、未来ちゃん。今日は遊びに行かないのかい?」



洗濯物を籠に入れたおばあちゃんが言ってくる。


おばあちゃんでも流石に暑いのか額には汗が滲んでいる。



「うん、今日は友達が東京に行ってるから遊ばないよ」



私がそう言うとおばあちゃんは「そうかい」と言いながら私の隣に腰掛ける。




「そのお友達ってどんな人なんだい?」




おばあちゃんが優しい顔で聞いてくる。
初めて友達が出来たかのように。




「えっと…精神的にはまだまだ子供で、だけどたまに大人で、笑顔がすごく綺麗な人」



口にするとなんだか照れる。
改めて海音の顔が浮かんでしまう。
もしかしたら私は海音のことが好きなのかも知れない…。
そんな風に思ってしまった。



「そりゃあ、いいお友達が出来たねぇ。今度おばあちゃんにも紹介してね」



おばあちゃんが笑う。
おばあちゃんの笑顔も私は好きだ。
海音とは違う、朗らかで暖かい陽だまりみたいな笑顔。


人の笑顔って不思議な力があるみたい。
私の笑顔も誰かにこんな風に安心させたり出来たらいいな、なんて思ったり。



「うん!もちろんだよ!」



私がそう言うとおばあちゃんも嬉しそうに頷いてくれた。



「ありがとう、未来ちゃん。じゃあおばあちゃんはお昼ご飯作ってくるね」



おばあちゃんは立ち上がって台所へと向かった。


ぽつん。


一人になるといつも浮かぶのは太陽みたいな笑顔のきみ。
私の心の一部になってしまったみたい。


だけど、会えない。
寂しいよ…海音。
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