きみが教えてくれた夏

しばらくして、私の目の前にそうめんが出てきた。



「夏はそうめんだねぇ」



おばあちゃんがつゆを片手にそう言った。


確かに。
こんな暑くてはなかなか喉を通らない。
冷たいそうめんはピッタリだ。



つるつる。


つるつる。



そうめんはすぐに喉を通る。
つゆの少し濃い味と食べやすい食感に胃も、喉も大満足。



だが、私の気持ちはどこか不十分なままで。
そこだけが満足いかない。



ここに来て数日。
きみが色々なことを教えてくれるから私の中できみという存在が必要になってしまったんだ。


私はそんなドロドロした気持ちを紛らすようにそうめんを口に流し込んだ。