続・祈りのいらない世界で
「いっ…イノリがいなくなっても大人になったら会いに行くから…。それまでイノリを忘れないからっ…だからイノリも忘れないでね」


「だから、いなくならないって言ってるだろ。大丈夫だよ。大丈夫だ」



イノリは自分に言い聞かすように呟くと、未だ涙を流すキヨの額に優しくキスをした。

額に馴染んでいるイノリの感触。



もしかしたらこれが最後になるのかもしれない。


そう思ったら再び涙が零れ落ちてきた。




「やっぱりやだっ!!いなくなっちゃやだぁ……イノリっイノリぃ〜」


「何でまた泣くんだよ。さっきは会いに行くからとか言ってたくせに」


「だって…」


「…やっぱりキヨには俺がついてなきゃダメだな。本当泣き虫で甘ったれで…俺がいなきゃ何も出来ないんだから。…そんなキヨだからいいんだけど」



イノリは微笑むと、キヨにちょんっと触れるだけのキスをした。




「チューは結婚したい好きなヤツとだけするんだ」

「え?」

「何でもない。帰るぞ」



イノリはキヨに傘としてさしていた葉っぱを持たせると、キヨをおんぶした。


そのままイノリは歩き出す。




葉っぱから滴り落ちる雫。
止み始めた雨の中、2人は家路を目指した。




葉っぱの傘をさした2人が家に近付くと、レインコートを着たカンナ、カゼ、ケンの3人が2人を待っていた。




「イノリっ!!キヨっ!!おかえり♪」



笑顔で手を振るケン、カンナ、カゼを見たキヨは、3人が自分にとってどれほどの存在なのかを知った。




本当の家族よりそばにいて
本当の家族より理解し合えて
本当の家族より愛をくれる


カゼ、カンナ、ケン
そしてイノリは私の第2の家族なんだね。




「キヨもイノリもびしょ濡れだけど大丈夫?寒くない?」

「大丈夫だよ、カンナ。ありがとう」

「………葉っぱの傘。いいね」



カゼはイノリにおんぶされているキヨが握っている葉っぱを見て、コクっと頷いた。
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