続・祈りのいらない世界で
「イノリとキヨ。祭ちゃんがね、イノリを引っ越しさせたりしないって言ってたわよ。だから大丈夫。私達はずっと一緒よ」



カンナの言葉を聞いたキヨは声をあげて泣き出した。

イノリの瞳も潤んでいる。



「うぁぁぁん!!よかったよぉぉ!!!!イノリっ…いなくならなくてよかったぁ…うわぁぁぁんっ!!!!」



あまりにキヨが号泣する為、カンナ、ケン、カゼそしてイノリの4人もつられて泣いた。



小さい彼らには遠く離れてまで絆で繋がっていられる自信がなかった。



だからそばにいたかった。
いなきゃダメだった。


誰も欠ける事なく、ずっと5人で…





5人が泣き止む頃、薄く陽が射している空に虹が架かっていた。



「折角だからレインコート着て虹の根っこ探しに行こうよ」

「いいね♪行こう行こう」



ケンの意見に賛成した4人はレインコートを羽織り、横一列に並んで歩いた。




「あら、ちびっ子レンジャーで何処行くの?」

「虹の根っこ探しに行くの♪」

「虹の根っこ?」

「うん。虹の先っぽ見つけたら虹の上を渡れるでしょ?」



キヨの言葉を聞いた近所のおばちゃんは微笑む。




「てか、もうちびっ子じゃないよ。小学4年生だもん」

「そうね。ごめんなさいね、健斗ちゃん。じゃあ今はガキっ子レンジャーかしら」

「…ガキって」



暫くおばちゃんと話していた5人は、再び虹の根っこを探しに向かった。



さっきまで晴れ間が覗いていた空は次第に暗くなり、またしても雨が降りそうな程、雲に覆われていた。




「疲れたぁ…。全然虹に近付かないね」

「雨も降りそうだしな」



手を繋いで歩いているキヨとイノリの会話をキヨの隣りで聞いていたカゼは、レインコートの中からティッシュで作ったてるてる坊主を取り出した。




「カゼ?てるてる坊主なんか持ってきたの?」

「………うん。雨降らないように」
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