続・祈りのいらない世界で
「何話したんだ?」

「イノリには内緒♪」



キヨがニシシっと笑うと、イノリはキヨの手を引っ張り外へ出た。




「イノリ何処行くの?」

「今度は2人だけで虹探しに行こうぜ」

「…うんっ♪」



レインコートと同じ色の長靴を履いた2人は、水溜まりに入って遊びながら虹を探しに向かった。



しかし土手を通り過ぎている頃、キヨがいきなり立ち止まった。



「…イノリ…もう歩けない」

「は?まだ土手までしか歩いてねぇぞ」

「もう無理!!疲れた!!…歩けない」



キヨが不機嫌そうな顔をしてしゃがみ込むと、イノリは面倒くさそうな顔をしながらキヨを抱っこした。



抱っこされたキヨは、嬉しそうにバタバタと足を振って喜ぶ。




「暴れるなっ!!レインコート着てんだから滑るんだよ」

「イノリ。イノリが抱っこするのは私だけにしてね」

「私だけにしてねって…。お前以外にこんな甘ったれな奴いるかよ!!」



2人が騒いでいると空から陽の光が降り注ぎ、雨で濡れた土手の草むらがキラキラと光り出した。




「イノリっ!!あれっあれっ!!」

「だから暴れるなって!何だよ」



再びイノリの腕の中で暴れ出すキヨ。

キヨが指差す方を見ると、雲の隙間から大きな虹が架かっているのが見えた。




「…虹にとっての花壇は雲なのかもしれないね。だからどんなに探しても根っこに辿り着けないんだね」

「そうだな」




光に包まれた小さな赤とピンクのレインコートは、優しく輝いていた。
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