続・祈りのいらない世界で
3・消えない傷跡
ある日、キヨは自室でアルバムを眺めていた。
「こうやって見るとみんな老けたなぁ。私もだけど」
キヨのアルバムやプリクラ帳は5人で撮ったものばかり。
毎日一緒にいるから、特に成長に気を留める事はないが、改めて若き頃の写真を見ると、5人がどれだけ成長したかがわかる。
…ただ、1人だけはもう時間が進まない。
キヨ達がこれから先どんどん年老いて行っても、カゼだけは22歳の姿から歳を取らない。
その現実が悲しかった。
「美月、折角の休みだしどっか行かねぇか?」
昼過ぎになってようやく起きたイノリがキヨの部屋に入ると、キヨはアルバムを見ながら涙を流していた。
「…?なんで泣いてんだよ」
「…っ。アルバム見てたらね、もう…カゼの写真は増えないんだって思ったら悲しくて…」
イノリはキヨが見ているアルバムに視線を移すと、ある写真が目に映った。
「…刹那?何だ、この写真…」
イノリはペンで“刹那”と書かれ、大切そうにしまわれている黒い写真に気付いた。
「…カゼとの赤ちゃんのエコー写真だよ。一瞬だけ私のお腹にいたから、カゼと一瞬って意味の“刹那”って名前付けたの。男の子でも女の子でも付けられそうな名前でしょ?」
キヨの言葉を聞いたイノリは眉間に皺を寄せると、アルバムを床に叩き付けた。
「――!?イノリ?」
「お前はカゼを想い過ぎだ!何なんだよ!!物心ついた頃から俺だけ見てたとか言ってたけど、実はカゼの事が好きだったんじゃねぇの!?カゼ、カゼ言いやがって!!」
「…なんでそんな事言うの?私はイノリだけなのに…伝わってないの?」
「あぁ!!伝わらねぇな!!…カゼの方がカッケーし優しいし、お洒落だし紳士だったからな。どう考えたって俺なんかよりカゼに惚れんのが普通だろ」
「私はっ…口が悪くて自己中で寝癖だらけで怒りんぼで…でもそんなイノリが好きなんだよ!?」
「…じゃあカゼの話はするな」
イノリはそう言うとキヨを冷たく睨み付けた。
「こうやって見るとみんな老けたなぁ。私もだけど」
キヨのアルバムやプリクラ帳は5人で撮ったものばかり。
毎日一緒にいるから、特に成長に気を留める事はないが、改めて若き頃の写真を見ると、5人がどれだけ成長したかがわかる。
…ただ、1人だけはもう時間が進まない。
キヨ達がこれから先どんどん年老いて行っても、カゼだけは22歳の姿から歳を取らない。
その現実が悲しかった。
「美月、折角の休みだしどっか行かねぇか?」
昼過ぎになってようやく起きたイノリがキヨの部屋に入ると、キヨはアルバムを見ながら涙を流していた。
「…?なんで泣いてんだよ」
「…っ。アルバム見てたらね、もう…カゼの写真は増えないんだって思ったら悲しくて…」
イノリはキヨが見ているアルバムに視線を移すと、ある写真が目に映った。
「…刹那?何だ、この写真…」
イノリはペンで“刹那”と書かれ、大切そうにしまわれている黒い写真に気付いた。
「…カゼとの赤ちゃんのエコー写真だよ。一瞬だけ私のお腹にいたから、カゼと一瞬って意味の“刹那”って名前付けたの。男の子でも女の子でも付けられそうな名前でしょ?」
キヨの言葉を聞いたイノリは眉間に皺を寄せると、アルバムを床に叩き付けた。
「――!?イノリ?」
「お前はカゼを想い過ぎだ!何なんだよ!!物心ついた頃から俺だけ見てたとか言ってたけど、実はカゼの事が好きだったんじゃねぇの!?カゼ、カゼ言いやがって!!」
「…なんでそんな事言うの?私はイノリだけなのに…伝わってないの?」
「あぁ!!伝わらねぇな!!…カゼの方がカッケーし優しいし、お洒落だし紳士だったからな。どう考えたって俺なんかよりカゼに惚れんのが普通だろ」
「私はっ…口が悪くて自己中で寝癖だらけで怒りんぼで…でもそんなイノリが好きなんだよ!?」
「…じゃあカゼの話はするな」
イノリはそう言うとキヨを冷たく睨み付けた。