続・祈りのいらない世界で
しかし、その3日後。

キヨはまた、ケンとカンナと共に病院へ向かっていた。



「イノリっ!!!!」



キヨが病室に入ると、点滴に繋がれたイノリがベッドの上で眠っていた。




「奥様ですか?旦那様は高熱を出されて、そのせいで会社の階段を踏み外してしまったそうです。でも目立った怪我はないので、目が覚めれば大丈夫ですよ」



部屋にいた医師の言葉を聞いたキヨは医師に頭を下げると、イノリの顔を見つめた。




ただでさえ仕事で疲れているのに変な心配まで掛けてしまう。

イノリに負担をかけているのは私だ。




キヨはアザが出来ているイノリの頬に触ると、涙が込み上げてきた。




「…ごめんなさいっ。イノリ、ごめんなさい」

「キヨ?何で謝ってるの?」

「だって…私のせいだもん。イノリ疲れてるのに迷惑掛けて心配させて…私がいけないんだ」



ゴシゴシと涙を拭うキヨをケンは優しく抱き締めた。




「…キヨ?イノリはキヨが好きだから心配するんだよ。それはみんな同じ。大切な人の心配くらい誰だってする。だからキヨは何も悪くないよ」


「ケン…」


「心配させる天才だもんね、キヨは。そんなキヨがみんな大好きなんだよ。キヨももう、わかってるだろ?」



ケンがよしよしとキヨを撫でていると、イノリが目を覚ました。




「…あ?ここ…何処だ?」



自分の置かれている状況が把握出来ないイノリは、ゆっくりとキヨ達に視線を移した。



「ばっ…!ケン!!美月に触ってんじゃねぇっ!!」



いきなり起き上がったイノリの腕から点滴の針が抜ける。
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