続・祈りのいらない世界で
1・星になったブーケ
『いってきます』
いってらっしゃい
『ただいま』
おかえりなさい
そんな些細なやり取りが幸せで
大好きな旦那様に妻として
朝起こしたり、ネクタイを結んだり、ご飯を作ることが生き甲斐になりつつある日々が愛しかった。
婚姻届を提出し晴れて夫婦になったキヨとイノリだが、“新婚”という雰囲気はない2人。
キヨはそれに不満を抱いていた。
「ねぇ、私達夫婦だよね?」
「それ以外何があるんだよ」
「だってさぁ…入籍する前と何も変わらないんだもん」
リビングで結婚式場のパンフレットを眺めているイノリの横でストレッチをしているキヨ。
キヨはイノリに不満をぶつけた。
「仕方ねぇだろ。お前と俺は23年間も一緒にいるんだぞ?今更、何が変わるっていうんだよ」
「イノリがそんなんだから変わらないんだ!」
キヨは顔を膨らませると腕立て伏せを始めた。
「じゃあ何すりゃいいんだよ。言ってみろ、お前がして欲しいこと全部してやるから」
イノリは腕立て伏せをしているキヨを抱き上げると、膝の上に乗せた。
「うんとね、毎朝いってきますのチューしたり、私がご飯作ってる時ずっと後ろから抱きしめてくれてたりとか?」
キヨはニヤニヤしながらイノリにして欲しい事を話し始めた。
「あと一緒にお風呂入るとか♪」
「…却下だ」
「なんで!?私がして欲しいことしてやるって言ったくせに!この嘘つき寝癖!!」
キヨはイノリの髪を引っ張りながら暴れ出した。