続・祈りのいらない世界で
「着いたぞ。起きろ」


イノリはキヨを起こすと車から降り、チャイルドシートを外すとフウを抱っこして車から降ろした。




「……きよ」

「はいはい、おいで」



キヨが車から降りると、フウはキヨに手を伸ばす。




「フウ、俺じゃ不満なのか?」



フウに抱っこを拒まれたイノリはヘコむ。




「仕方ないでしょ。私の方がフウといる時間が長いんだもん。そりゃ懐かれるよ」

「…精神年齢も同じくらいだしな」

「何それ!!」



3人は騒ぎながら、カゼのお墓へとやってきた。



暖かい日の光が降り注ぐお寺は、線香の匂いが広がる。




「カゼ、今日はフウ連れてきたよ」



イノリとキヨはお墓の前に屈むとカゼの名前を見つめた。




「フウ、お前のパパはここで眠ってるんだよ。わかるか?」



キヨに抱っこされながらキョトンとしているフウに呟くイノリ。




「パパだよ、フウ。あなたのパパ、カゼがここにいるの」

「……ぱーぱ?」

「そう、パパ。凄くカッコよくて凄く優しい人だったんだよ。本当に…素敵な人…」



キヨがそう呟くと、フウは『きゃー』と嬉しそうな声をあげる。



イノリとキヨはカゼを見ているかのように、優しく微笑んでフウを見つめていた。
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