続・祈りのいらない世界で
2人はカゼの母とフウと別れると、涼しい風の吹き渡る土手へとやってきた。



夏が終わった季節は、段々と日が沈む時間が早くなる。


夕日に染まるオレンジ色の空をイノリとキヨは手を繋いで眺めていた。




「本当、カゼのおばちゃんはカゼそっくりだよね。見た目から性格まで」


「まぁな。カゼの女顔はおばさん譲りなんだろ」


「DNAが濃いのは、カゼじゃなくておばちゃんなんだね」



夜へと向かう土手には、懐かしい香りを運ぶ風が吹き抜ける。




キヨはもしイノリが本当にカンナ達から離れて暮らすつもりなら、他の何処かではなく、地元に戻りたいと思った。



ここには、沢山の思い出が詰まっているから

バラバラになっても寂しくない…


5人一緒にいると思えるから…。





「…ねぇイノリ」

「ん〜?」

「ここでさ、こうやってイノリと星を眺めていられるだけで幸せだったのにね。…どうして私達は…あの頃、あんなにもすれ違っていたんだろう…」



若気の至りってやつだったのかな?


一緒にいられれば
隣りにいてくれれば

もうそれで幸せだったのに…



私は何を望んでいたんだろう。



何で…
あんな事になっちゃったんだろう。






「…私達がバラバラにならないで5人でいたら、カゼはあの日事故に合わなかったかもしれない。カンナも苦しまなくてよかった。…ずっと5人でいられたんだよね」



もっと私がしっかりしていたら
自分の想いを優先しなかったら


誰も悲しまなくて済んだのかもしれない。





「…イノリがいてくれるだけでよかったのに。そうわかっていたのに…私っ…」



「美月、運命って言葉があるだろ?運命は生まれる前から決められてるって話。

変えられる運命もあれば何をどうしても変えられない運命もある。

カゼの死も、今カンナが苦しんでいるのも全て決められていた運命なんだ。
運命に逆らえなかっただけ」



「…難しくてよくわかんない」





キヨが首を傾げるとイノリはフッと息を漏らした。
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