続・祈りのいらない世界で
「キヨは本当にイノリが好きだなぁ。俺さ、キヨ見てるとたまに思う事があるんだ」

「ん?何を思うの?」



キヨがケンを見ると、ケンは優しく微笑んだ。




「人ってここまで一途に誰かを愛せるんだなって」

「…だって、イノリしか好きになれないんだもん」

「かぁーっ!!ノロケかよ!!イノリの幸せ者〜!!」



ケンと他愛のない話をしていると段々と眠たくなってきたキヨ。


暫くすると、リビングにはケンとキヨの寝息が響きだした。




「たでーま。美月、起きてるか?」



帰宅したイノリはリビングに入ると、寄り添って眠るキヨとケンの存在に気付いた。


酔っているせいか、いつもより苛立ちを感じたイノリはケンの肩に頭を乗せて眠っているキヨを思い切り自分に抱き寄せた。




「――っ!?…何だイノリか。ビックリしたぁ」

「何でケンとくっついてんだよ。お前は他の男と2人でいるな」

「他の男って…。ケンだよ?」



キヨが首を捻ると、イノリはキヨを押し倒し服を捲る。




「ちょっとやだっ…!!ケンいるのよ!?何、考えてるの!?」

「寝てっから大丈夫だよ。お前が声出さなきゃ起きねぇよ」



抵抗するキヨに無理矢理キスをするイノリ。

イノリはお酒の匂いがした。




「やだっ!!イノリっ…酔ってるでしょ!?お酒くさい!!」

「黙れ」



イノリの力に適うはずがなく、キヨはされるがままでいると、いきなりイノリに腕を掴まれた。




「お前、この指輪なんだ?誰に貰った」

「イノリ、覚えてないの?イノリが小学生の頃、私にくれたんじゃない」

「…誤魔化したって無駄だ。他の男にでも貰ったのか?」

「イノリがくれたって言ってるでしょ!?この酔っ払い!!」



キヨがイノリの体を強く押し退けると、イノリは無理矢理指輪を外し、床に投げつけた。


床に叩きつけられた指輪はトップが外れ、壊れてしまった。
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