続・祈りのいらない世界で
「酷いっ…!!壊れちゃったよ?」

「うるせぇ!!お前は俺のものだって事がわかってないようだな。わからせてやる」



イノリはキヨの両腕を片手で締め上げると、キヨの体に口を寄せた。




「やだやだ!!イノリ嫌い!大嫌いっ!!!!だから離して!!」

「…俺も嫌いだ。このバカ!!」



イノリはキヨから離れると、ズカズカと足音を鳴らしながら部屋へと入って行った。


イノリが部屋に入るのと同時にカンナが帰宅した。




「…おかえり…カンナ」

「ただいま。…どうしたの?キヨ。泣きそうな顔してるけど」



カンナがキヨの頭を撫でると、2階からフウの泣き声が聞こえてきた。




「…あれ。フウが夜泣きするなんて珍しいね」

「そうね。…キヨ、お願い」

「え?たまにはカンナが構ってあげなきゃ。フウ、きっと寂しいんだよ。私の事をママって呼ぶようになっちゃってるんだよ!?」

「…いいのよ、それで」



カンナは首を振ると、自室へと入って行ってしまった。




家中に響き渡るフウの泣き声。


その声を聞いたキヨは、何だかイライラしてきた。




カンナの態度にも
酔ったイノリにも




「……まーまっ。まま…」



キヨがフウの部屋に入ると、泣き喚いているフウはキヨに手を伸ばす。


キヨはフウを抱き上げ、コートを着せてマフラーを巻き付けると玄関に降りて行った。



「……ぽっぽ(散歩)?」



涙で潤んだ瞳で見つめるフウに頷くと、キヨはコートを羽織り家から出た。


冬に向かいつつある夜の空は澄んでいて、星が大きく見える。




「……まま、えんえん?」



フウはキヨの頬に流れる涙を触りながら、キヨを見る。




「うん。フウより私の方が、いっぱいエンエンしちゃってるね」



キヨはフウの頭に頬を寄せると、そのまま近くの公園に向かった。


夜の公園は街灯の光がチカチカいっている音しかしない。



キヨがフウを降ろすと、フウはトテトテと公園を駆け回り始めた。

キヨはベンチに座る。
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