続・祈りのいらない世界で
「降ろして!今はイノリといたくない!!私、もう色々我慢の限界よ」


「我慢なんかしなくていい。お前は俺が困るくらいワガママでいればいい。困らねぇから」



バタバタと暴れるキヨを抱っこしながら家に帰ったイノリ。


イノリはケンにフウを託すと、キヨを抱っこしたまま自室へと入りキヨをベッドの上に座らせる。




「…もう一度聞く。美月は俺が嫌いか?」



イノリはキヨの前に屈むとキヨの顔を見つめた。

キヨはイノリから目を逸らす。



「嫌い」

「…そうか」



イノリは悲しそうに微笑むと、頭を下げた。




「俺もカンナも美月に頼りすぎてんだな。全部お前1人に任せっきりだもんな。…美月がイラつくのは当たり前だ。こんなになるまで気付いてやれなくてごめんな」


「…違う。イライラしてただけじゃない。
確かにフウに無関心なカンナにも、酔ったイノリにもイラッとしたけど…。
同窓会の事も、少し嫌だった」


「同窓会?なんで同窓会が嫌なんだよ」


「だって…カゼの話になるじゃん!!あの出来事をまた思い出さなきゃならないし、クラスの人みんないるのにカゼだけがいないのが嫌なの。
私、泣いちゃうもん…。
もう全てがやだっ!!!!」



涙目でイノリに訴えかけるキヨを見つめるイノリ。

するとイノリはボソッと呟いた。




「…泣くな」

「え?」

「他の男の為になんか泣くな。…泣かないで…」

「イノリ…」



悲しそうに瞳を揺らすイノリにキヨは抱きついた。



辛いのは自分だけじゃない。

人間は誰だって、辛さや苛立ちを感じているはず。




イノリだって
カンナだって


大人びてはいるけど、同い年であって大人じゃない…。
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