続・祈りのいらない世界で
「清田、お前髪染めただろ?」

「これは地毛です」

「嘘をつくな!!1年の内から染めるなんて非行の始まりだ」



生徒指導の先生に髪を引っ張られるキヨ。


その手を払いのけたカンナはキヨの腕を掴んで自分に引き寄せた。




「キヨの髪は本当に地毛ですよ。小さい頃からこの色でした」

「カンナ…」



引っ張られて痛む髪をさすりながら、キヨはカンナに寄り添った。




「黒花は関係ないだろ。清田、ちょっと来い。他の先生にも審議してもらうぞ」



先生はキヨの腕を掴むと、教官室に連れて行った。


教官室に入ると、キヨは数人の教師に囲まれて髪を見られていた。




「…本当に地毛なんです!!染めた事なんかありません!!親にでも聞いて下さい」

「親は子どもを庇うからな。アテにならない」



グイグイと髪を引っ張られるキヨ。

教官室にいる教師全員が地毛である事を否定した。




「明日また検査するからな。明日までに黒く染めてこい」



誰にも信じてもらえない事と、恐い顔をした教師に囲まれていた事が恐くなったキヨが泣きながら教官室から出ると


教官室の前にイノリ、カゼ、カンナ、ケンが心配そうな顔をしながら立っていた。




「キヨ、大丈夫?」

「…うん。大丈夫…」



声を掛けるカンナに無理矢理笑みを向けると、キヨは1人教室へと戻っていった。


その後をイノリが追う。





「………俺、早退する」

「は!?何言ってるの、カゼ!!今日は入部の日だろ」

「………そんなものより大切な用があるからね。じゃ」



カゼはそう言うと、ホームルームにも出ないでそのまま帰宅した。




「カンナ、止めなくてよかったの?カゼ本当に帰っちゃったよ」

「…ケン、カゼが何で帰ったかわからないの?」



カンナがケンを見るとケンは首を傾げる。




「キヨを大切に想うなら、私達も帰るわよ」



何が何だかわからないケンを引き連れて、カンナも帰宅した。
< 239 / 386 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop