続・祈りのいらない世界で
「キヨ!!待てよ!!」



イノリはキヨの肩を掴むと、キヨを自分に向かい合わせた。

キヨはポロポロ涙を流している。




「何言われた、先公共に」

「…何でもない、ほっといて」

「お前を泣かせたのは誰だって聞いてんだよ!!!!早く言え!!」



イノリが怒鳴るとキヨは声をあげて泣き出した。




「うぁぁぁん!!だって髪の毛が茶色いのは地毛なのにっ…誰も信じてくれなかったんだもん!!先生…恐い顔しながら髪引っ張るしぃ〜…」



キヨはイノリの制服を掴みながら、教官室であった事を話した。




「…お前の髪引っ張ったのは誰だ?」

「ひっく…生徒指導の先生…」



キヨの言葉を聞いたイノリは、教官室に向かって走り出した。


怒りのオーラを纏ったイノリに気付いたキヨは、咄嗟に後を追う。





「おい!!!!」



イノリは教官室のドアを蹴り上げると、中にいた教師を睨み付けた。

いきなりの事に教師達は驚いている。



「お前は1年の…北山だな。教師に向かってなんだその態度は」


「うっせぇ!キヨを泣かせやがって!!先公だからって許さねぇぞ」


「キヨ?…清田の事か?あれは清田が髪を染めたのがいけないんだろ」


「あいつは染めてねぇよ!!元から色素が薄いだけだ。何で信じてやらねぇんだよ!!」



イノリは近くにある机を思い切り蹴飛ばした。

教官室にはガァァンという暴音が響く。



「…茶髪は茶髪なんだ。清田が黒くすればいいだけだろ。お前も停学になりたくなければ、今すぐ教室に戻れ」



生徒指導の教師がイノリの体を押すと、イノリは教師の胸倉を掴んだ。




「キヨに謝れよ。テメェ大人だろ?先公だろ!?生徒泣かせといて平然としてんじゃねぇよ!!」


「イノリっ!!もういいから!!私が染めればいいだけなんだから。本当に停学になっちゃうよ!?」



今にも教師を殴ってしまいそうなイノリをキヨは止める。
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