続・祈りのいらない世界で
「カンナ、入るよ」



キヨはカンナの部屋のドアを叩くと中に入った。


カンナはベッドにうつ伏せになって眠そべっている。



「カンナ?どっか悪いの?大丈夫?」



キヨがカンナの背中をさすると、カンナはゆっくり体を起こした。

カンナの顔はやつれている。



「…大丈夫。何か用だった?」

「うん。カンナも明日地元帰るよね?」

「えぇ、帰るわよ」



カンナは手ぐしで髪を整えるとキヨを見つめる。




「…ねぇカンナ、今の私にはカンナの苦しみはわからない。でもね、今のカンナは私がイノリに片思いしてた時みたいな気持ちなのかなって思う。…もしそうだったのなら、辛いよね。1人じゃ恐いよね?」



キヨはカンナの瞳を見入る。

カンナの顔をちゃんと見るのは久しぶりな気がした。




「キヨ…。私、どうすればいいかな。このままじゃいけないってわかってるよ?このままじゃ…イノリもキヨも、ケンもフウも私から離れて行ってしまう。…でも私、カゼが…」


「うん」


「…カゼが…好きなの。やっぱりカゼじゃなきゃ駄目なのっ!!でも…寂しいの」



カンナは震えながらキヨに寄り添った。




「わかるよ、カンナ。話してくれてありがとう。やっとカンナの気持ちがわかったよ。私、嬉しい」



キヨは優しくカンナの背中を撫でる。




「…ケンは優しいから縋りたくなるよね。私もあの頃そうだった。でもケンは何でも受け止めてくれるよ。だから1人で抱え込んだり悩まなくていいんだよ?

ケンはカンナのそばにいたいけど、カンナにはカゼを想ってて欲しい、カンナはカゼが好きだけどケンにそばにいて欲しい。

その気持ちを2人して隠すから、辛くなるの。
ケンにカゼへの気持ちを伝えたって、ケンはカンナのそばにいてくれるよ」



「ありがとう、キヨ。…もう少し自分で考えてから、ちゃんとケンと話し合うわ。それから…フウの事もね」



久しぶりにカンナとの会話楽しんだキヨは、フウのいるリビングへと向かった。


フウは1人子ども用の椅子に座ってテレビを観ている。
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