続・祈りのいらない世界で
「フウ、静かだと思ったらいい子にテレビ観てたのね」



キヨがフウに話し掛けると、フウはトテトテとキヨに駆け寄ってきた。

キヨはフウを抱き上げる。



「そうだ。明日、車で帰るんだけど、チャイルドシートがあるから後部座席狭いよね。…何とかならないかな」



キヨはジッとフウを見つめると、何かを閃いた。



キヨは家にあるバッグや段ボールを引っ張り出すと、バッグの中にフウを入れてみた。



「…かっ可愛い!!フウ、可愛い〜♪」



大きなボストンバッグに収納されたフウを見て喜ぶキヨ。

フウも楽しいのか、嬉しそうな声をあげる。



フウの喜ぶ顔を見て嬉しくなったキヨは、フウと一緒に色々な物に入って遊んでいた。




「…おい。何やってんだよ」



仕事を終えリビングにやって来たイノリは、段ボールに入っているキヨとフウを見下ろした。



リビングにはバッグが散乱している。



「あのね、明日車狭いだろうからフウをカバンに入れればいいんじゃないかなって思って」


「バカか!!何時間もそんな中に入ってるフウの身にもなれ!!」


「じゃあ私が入る」


「お前が入るカバンなんかねぇよ!!とにかくさっさと出て片付けろ!!」



イノリに怒られたキヨはフウと共に渋々段ボールから出た。




「………ふう、ねんね」

「うん、明日は早起きしなきゃだからね。ねんねしよっか」

「………まま、ねんね?」

「うん、フウがねんねするまで一緒にいるよ。…って事でイノリ、片付けといてね」

「はぁ!?ふざけんな!!」




キヨはイノリの言葉を聞かずフウを部屋に連れて行くとベッドに寝かせ、お腹をポンポンと叩きながらフウを見つめていた。
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