続・祈りのいらない世界で
「ねぇねぇ、北山くんと美月の赤ちゃん生まれたら、また集まろうかってみんなが言ってるんだけど、美月予定日いつ?」


「予定日は4月10日だよ。生まれたらまた連絡するね」


「わかった♪楽しみにしてるよ。元気な赤ちゃん生むんだよ?みんなで応援してるからね」


「ありがとう」




暫く友達と話し込んだ後、キヨは少し泥酔気味のイノリの肩を支えながら、家へと向かった。



家までの夜道には冬の冷え切った風が吹いている。



「イノリ、大丈夫?寒くない?ちょっと休む?」

「…あー…。カゼんとこ行く…」

「えっ!?今からお寺行くの?絶対お化けか何か出るよ!!明日で良くない!?」

「お化けは…冷蔵庫に入れれば問題ない…」



酔っているせいか可笑しな発言をするイノリ。


多分童謡の『おばけなんてないさ』のことを言っているのだろう。




仕方なく、イノリを引き連れながら暗いお寺に向かったキヨ。



冬の冷えた空気と薄明るい電灯しかない真っ暗なお寺は、少々不気味である。


キヨは少し怯えながらイノリにすり寄った。




「こんな時間にごめんね、カゼ。イノリのバカが来たがってさぁ」



キヨと共に墓前に屈んだイノリは、コートのポケットからミニサイズの酒瓶を取り出した。




「え!?イノリ、そんなの持って帰って来たの?」

「あぁ。本当はカゼはカクテルしか呑まねぇからカクテルにしてやりたかったんだけど、カクテルは持ち帰り用がなかったんだよ」



イノリは酒瓶を墓前に置く。



少しでもカゼに同窓会の気分を味わってもらう為に…。
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