続・祈りのいらない世界で
「水炊きがいい!!」

「キムチ鍋以外は食わない!!」

「すき焼きだって言ってんだろ!!」

「ワガママ言わないの!!今日はちゃんこ!!」



いつまで経っても折れない4人に痺れを切らせたカゼは、リビングの電気を消した。



「わっ!?停電!?」

「………俺が消した」

「なんで電気消す必要があんだよ!!早く付けろ!!」



イノリの言葉を聞かず、コンロの火の灯りを頼りにカゼはノソノソと台所へと向かった。




「とりあえず電気付けないと」

「いってぇ!!キヨ、足踏みやがったな!!」



キヨに踏まれたイノリが何となく手を振り上げると、その拳が誰かに当たった。




「ぎゃあっ!!誰、今俺殴ったの!!」

「うるさいわね!!危ないからジッとしてなさい!!電気はカゼが付けてくれるわよ」



暗闇の中、踏んだり殴ったりしながら4人が騒いでいるとカゼがリビングに戻ってきた。


カゼはボチャボチャと鍋に何かを入れる。




「カゼ?何入れたの?」

「………今日は間を取って闇鍋にしようと思って」

「闇鍋!!!???」

「………うん。テレビでやってた。暗い部屋で、スリッパとかストッキングが入った鍋食べるの」



バラエティー番組でやっていた企画を真似するカゼ。


水炊き、キムチ鍋、すき焼き、ちゃんこ鍋の間を取っても決して闇鍋にはならない。



「まさか本当にスリッパとか入れてねぇだろうな」

「………うん。俺はケンと違ってそこまでのバカじゃないからね」

「俺だって鍋にスリッパなんかいれねぇよ!!」

「でも楽しそうだね、闇鍋♪」



何の具材が入っているのかわからない鍋を囲みながら、煮えるのを待つ5人。



暫くすると、得体の知れない匂いが漂ってきた。
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