続・祈りのいらない世界で
カゼは2人をジッと見た後、カートにお菓子を入れた。



「………パパ、ママこれ買って」


「カゼ!?カンナとケンが捜しに行ったけど何処にいたの?」


「………お菓子コーナーにいた」


「てかこんなに菓子買わねぇぞ。1つにしろ」


「………イノリはお父さんにはしたくないタイプだね」


「俺だってカゼみたいな子供はお断りだ!!」



買い物を済ませた5人は手分けして買い物袋を持ち、家までの道を歩いていた。


辺りが明るいからか、白い息があまり見えない。




「…ん〜…眠い…」

「あ?帰ったら飯だぞ。もう少し我慢しろ」



スーパーからの帰り道、少し前を歩くカゼ、カンナ、ケンを見つめながら空腹が通り過ぎたキヨは眠気に襲われ、ぐずり始める。




「眠たい。もう歩きたくない」

「じゃあそこで寝ろ。じゃあな」



キヨを1人残し、カゼ達の元へ歩いていってしまうイノリ。


キヨは小さくなっていくイノリの背中を見た後、その場にしゃがみ俯いた。





雪が多い地元より雪のない東京の方が寒い。

まるで、東京という場所を表してるように思える。



いつか、その冷たい空気にイノリは消えていってしまうのだろうか…。




寒さが寂しさを呼んだ時、キヨの前に誰かが屈んだ。




「…1つ聞くが、俺はお前がいくつになるまで面倒を見なきゃならねぇんだ?」



キヨが顔をあげると目の前には不機嫌そうなイノリがいた。




「…100歳くらいまで…かな」

「そうか。なら健康なじいさんにならないとだな」



イノリは困ったように微笑むと、キヨが持っていた荷物を腕に掛け、キヨに背中を突き出した。




「ほら、早く乗れ。帰るぞ」



キヨが背中に乗ると、イノリは立ち上がって歩き出す。



「寒くねぇか?」

「…寒い」

「マフラーと手袋してこねぇからだろ。ったく、バカなんだから。…俺のコート着るか?」

「イノリが温かいから大丈夫」



キヨは昔から乗り慣れている大きくて優しい、大好きな匂いがする背中に安堵を感じていた。
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