続・祈りのいらない世界で
「よーし。じゃあキヨの為にミニライブを開こうかな♪」



ケンは手に持っていた長ネギをマイク変わりに、台所のテーブルに乗って歌い始めた。



キヨも盛り上げる為、フライパンをお玉で叩きリズムをとる。




「………まま、ふうも」



ケンの歌声とフライパンの音を聞きつけ、台所にやってきたフウにキヨは角砂糖の入った瓶を渡した。


フウは嬉しそうにそれを振る。




「♪〜俺にロックを歌わせたら〜右に出る奴はいない〜♪」

「わー♪ケン〜」

「………きゃー」



台所で小さなリサイタルが開催されていると、仕事から帰ってきたイノリがキッチンにやってきた。




「うるせぇ!!!!」

「………………」



イノリはそれだけ言うと着替えに自室へと向かった。


怒鳴られた3人は渋々騒ぐのを止め、夕食の支度を始めた。




「ちょっとイノリの所行ってくるから、ケン鍋見ててくれる?」


「はいよ。キヨはいつまで経っても新妻って感じだね」


「いつまで経ってもって言っても、結婚してまだ1年ちょっとしか経ってないよ?」


「そっか。まだ1年なんだよね。20年以上ずっと一緒にいるから、もっと経ってるように感じるけど」


「私とイノリはまだまだ新婚さんだよ」


「雰囲気は熟年夫婦だけどね」



キヨはケンの頭を叩くと、イノリの部屋へと向かった。
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