続・祈りのいらない世界で
イノリは無言のまま持っていた小さな箱をキヨの頭に乗せた。



「何?」

「…クリスマスプレゼント」

「まだクリスマスじゃないよ?」

「ゴチャゴチャうるせぇな!!いいから開けてみろ」



キヨが箱を開けると、中には先程キヨが欲しがっていた指輪が2つ並んで入っていた。




「…買わないんじゃなかったの?」

「気が変わったから買った」



どうせ買ってくれるなら回りくどい事しなきゃいいのに…と思いながらも、イノリの優しさが嬉しいキヨ。




「イノリ大好きっ!」

「公衆の面前で抱きつくな!!…それよりリングの内側に文字彫ってくれるってよ。どうする?」

「彫る!!」



2人はジュエリー売り場に指輪を持っていくと、イノリのリングに『MITSUKI』、キヨのリングに『INORI』と名前を彫って貰った。



そのリングを結婚指輪の上にはめるか、右手の薬指にはめるか悩んでいるキヨ。



「わーい♪恋人って感じするね」

「もう夫婦だろ」

「いいの!!イノリとは恋人だった期間が短かったから嬉しい」

「何でもいいけど、お前クリスマスプレゼント無しだからな」

「えーっ!!そんなのやだ!!」

「じゃあお前の好きなキャラクターの100円の菓子で我慢しろ」



クリスマスプレゼントを格下げされ、少しへこむキヨだが満足していた。



片思いしていた頃の憧れが実現した事で、本当にイノリを掴む事が出来たのだと実感出来たから…。



お互いの右手の薬指にはめられたペアリングを見て、キヨは微笑んでいた。
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