続・祈りのいらない世界で
「人はさ、涙の数だけ強くなるって言うだろ?だから美月は強いんだな」


「違うよ。泣いても泣き止ませてくれる人がいるから強くなったの」



キヨはガバッと起き上がると、イノリに頭突きをしてベッドから降りた。




「いってぇな!」

「ごめん、ごめん。それよりイノリ、TSU○YA行こう?クリスマスソング聞きたいの♪」

「TSU○YA?面倒くせぇな」



キヨは嫌がるイノリを説得し、出掛ける支度をして家から出ると車がない事に気付いた。




「あ?車は?」

「あー…。ケンがフウとデートするって朝から出掛けちゃったんだった」



最近フウに見捨てられ気味のケンは、少しでもフウの気を引こうとフウとドライブに出掛ける事にしたのだった。


そのせいで車庫に車はない。




「どうすんだよ。あいつら帰ってくるまで待ってるか?」


「自転車があるじゃん。自転車で行こうよ」


「はぁ!?お前、今2人分の体重あるんだぞ?それに東京でニケツなんて危ねぇよ」


「体重そんなに増えてないもん!たまにはいいじゃん♪」



あからさまに嫌そうな顔をしたまま、イノリは渋々自転車を取り出した。


キヨが車と接触したせいで自転車の荷台は曲がっている。




「カンナがいるから鍵かけなくていいよね」

「ケンの奴、カンナは連れて行ってやらなかったのか?」

「今日はフウとラブラブしたいって言ってたからね」

「気の利かねぇ男だな」



キヨは荷台に座ると、イノリの背中にギュッとしがみついた。




「お前落ちるなよ?落ちても拾わねぇで転がしとくからな」

「落ちそうになったらイノリも道連れにするもんねっ!!」

「何でだよ!!」



自転車に乗って騒ぎながら、TSU○YAを目指す2人。
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