続・祈りのいらない世界で
それから数日後の休日。



「もしもし!?イノリ!?俺だけど」



家のリビングには悲鳴とケンの慌てた声が響いていた。




「なんだよ、ケン」

「イノリ今どこ!?」

「病院に抜糸しに診察待ちしてんだよ!!何度も電話しやがって。お前、今日仕事じゃねぇの?…サボったな!?」

「それどころじゃないんだってば!!」



何やら電話口で困っているケン。

イノリは院内から中庭へと出た。




「どうした?何かあったのか?」

「キヨが……」

「うぁぁぁぁぁん!!!!!!」



通話口の音が割れる程の叫び声に驚くイノリ。


暫く耳にキーン…という音が響いていた。




「何だ!?今のは」

「キヨがね、昼寝から起きたらずっと泣いてるの!!フウもキヨにつられて泣いてるし…イノリ帰ってきて〜…」



ケンは半べそをかきながらイノリに助けを求める。


その間も電話越しにキヨとフウの泣き声が聞こえていた。




「なんで美月は泣いてんだよ」

「わかんない。ただずっとイノリって呼んでるよ」



それを聞いたイノリは病院に戻り、受付の担当者に診察キャンセルの話をすると、走って病院を出て行った。



タクシーを捕まえてイノリが急いで家まで帰ると、家の外にまで悲鳴が聞こえていた。



「うぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「おいっ!!帰ったぞ!!」



イノリは勢いよく玄関の扉を開き、リビングに走っていく。


リビングには顔を真っ赤にしながら泣き叫ぶキヨとフウ、困り果てたケンが必死に2人を宥めていた。




「おい、どうした美月。腹でもいてぇのか?」



イノリはへたり込んでいるキヨの頭をガシガシと撫でた。




「イノっ…イっノ…リ…うぇっ」



苦しそうに呼吸をするキヨを優しく抱きしめるイノリ。




「どうした?そんな風に泣いてると腹のガキがビックリするぞ」

「イノリっイノリ〜!!!!」



キヨはイノリに抱きつくと、イノリの胸に顔を擦り付ける。


それを見たケンは、ホッとしたように大の字に寝転んだ。
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