続・祈りのいらない世界で
「美月、迷子になるなよ」

「ならないよ!!…って言いたいけど、人が多すぎてなりそう」

「人がいなくてもなるだろ。…腹潰されねぇように俺の後ろにいろよ」



イノリはキヨの手を繋ぐと、キヨを自分の後ろに隠すようにして歩き出す。



その光景を見ていたイノリの母とカゼの母は微笑んでいた。



「そうだ、イノリ何か欲しいものない?誕生日だし買ってあげるよ」

「ない。いらん」

「そんなに即答しなくても…」

「だって何もいらねぇし」



イノリとキヨが話していると、カゼの母がやってきた。


フウは綺麗にラッピングされた大きな箱を抱えている。




「見て見て、祈ちゃんと美月ちゃん。ふうに玩具買ってあげちゃった♪いやぁ孫に貢ぐって幸せな事ね」

「おばちゃん、貢ぐって言い方は…」

「私も4月になったら孫にどんどん貢ぐわよ、美月ちゃん」

「祭ちゃんまで」



世間話をし始める3人に溜め息をついたイノリは、フウの包みを見ると屈んでフウと視線を合わせた。


フウはキョトンとしている。




「フウ、頼みがある。このリボン俺にくれねぇか?」

「………ぼん?」



イノリは箱にラッピングされているリボンを指差した。



「くれるか?」

「………あい」

「フウは優しいな。いい子だ」



頷くフウの頭を優しく撫でると、イノリは丁寧にリボンを外した。




「イノリ、リボンなんか貰ってどうするの?」

「欲しいもんが出来たんだよ」



イノリはそう言うと、キヨの首元にリボンを結んだ。



「え?何!?」

「俺の誕生日プレゼント、これでいいや」

「私ってこと?」

「そっ。金もかからねぇしな。…って、前からもう俺のもんか」



イノリは笑うと、再びキヨの手を繋いで歩き出した。
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