続・祈りのいらない世界で
「イノリ、イノリ!!それいいね♪プレゼントが私って」



キヨは顎を突き出して、リボンをイノリに見せびらかす。



「…じゃあ今夜ヤらせろよ」

「ぶっ…!!公衆の面前で何て事言うのよ!!この欲求不満!!」



繋いでいる手を引っ張り合っている2人の間に割り込むカゼの母。




「仲良くしてるところ悪いんだけど、今日私が腕によりをふるってご馳走作るから楽しみにしててね♪」


「わーい♪おばちゃんの料理好き」


「バーベキューじゃねぇの?」


「祈ちゃん、真冬に庭でバーベキューするほど私はバカじゃないわよ」



ショッピングモールをひと通り見て回ったキヨ達は家に帰ると

キヨ、イノリ、カンナ、フウと5人の両親みんなで、カゼの実家の居間でご近所さん新年会を始めた。




キヨ達が生まれてからは24年間

そして親達はここに越してきてからの付き合いである。




途切れることなく続いている5人とその親の関係。


何の血も繋がらないただのご近所さんも、今やもう家族同然。



「母さん、酒〜」



酒の入った親達が騒いでいる居間から抜け、縁側で月を眺めているキヨとイノリ。



「カゼのおばちゃんは、みんなを集めるの好きだよね」


「まぁな。昔からだけど、今は息子2人がいなくなっちまって寂しいんだろ」


「カゼのおばちゃんのご飯食べてるとさ、カゼが大食いになったのがわかった気がするんだよね」



あの頃よく、5人並んで縁側に座っては、月や星を眺めたり、庭で花火やスイカ割りをした。



今でもその情景が浮かんでくる。
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