続・祈りのいらない世界で
「…これからは、私達5人で作った思い出をフウや陽ちゃんが辿っていくんだよね。…私達はただ…思い出に浸るだけになる」




いつか…なくなる。

きっといつか思い出の場所も思い出もなくなっていく。



ショッピングモールが建ったり
新しい道路が出来たり



いつか全てがなくなる。



自分で覚えてるしかないんだ。




「美月、大丈夫だよ。思い出は増えるけど減りはしない。俺らが忘れたってフウ達が取り戻してくれる。だから大丈夫だ」


「…うん」




それが大人になるって事だよね。


新しい世代に自分の築き上げたものを差し出すのが親の役目。



いい加減、思い出に浸ってばかりいないで前を向かなきゃならない年齢。



それに目に見えるものが変わっていってしまっても

心の中にある思い出は色褪せたりしない。




目で見ることが出来なくても
心の中でカゼが生きているように


永遠になくならないものはある。




「そうだよね、カゼ…」




変わらないもの
変わっていくもの

受け継がれるもの
譲るもの



新しい年に新しい気持ちを抱いたキヨ達。




年が増える毎に
こうして人は大人になっていく。



実際の大人は小さい頃想像していた大人とは、全然違うものだったけれど


汚いものでも
悲しいものでもない


ただ少し寂しいもの。








「…そういや、カゼんとこ行ってねぇから明日帰る前に行ってくっかな」


「1人で行くの!?」


「俺が行く所にはお前も行くんだよ。俺とお前はガキの頃から何処行くのも一緒だろ。いちいち聞かなくてもわかれ」



大人は寂しいものだけど

寂しいだけじゃない。





そうイノリは教えてくれる。
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