続・祈りのいらない世界で
28・大好きが詰まったもの
『キヨだけは
何処にも行かないで…』
そう言って泣いていたのは誰だっただろう。
「よっしゃー!土手まで競争しようぜ」
物心ついた時にはもう、当たり前のように5人一緒にいた。
この日も家の前で遊んでいるとケンが口を開いた。
「私、やだ!…だってみんな足速いだもん」
「大丈夫だよ、キヨ。土手までだから近い、近い」
そう言ってケン、カンナ、カゼ、イノリは走り出す。
どんどん遠くなる4つの背中。
「カゼっ!カンナぁ!ケン…イノリっ!!待ってよ〜!!」
待って
置いていかないで
…いつかこうやって
みんな離れていっちゃうの?
私はただ、その背中を見届けるだけで何も出来ないままなのかな…
悲しくなったキヨは、その場にしゃがみ込んだ。
そよそよと吹き抜ける風がキヨの髪を揺らす。
すると、目の前に誰かが立った。
「……?」
涙で滲む視線を上に向けると
そこには……
.