続・祈りのいらない世界で
珈琲とおやつを運んできたキヨはケンと向かい合わせに座る。



「何?相談って。どうしたの?」



キヨはおやつの袋を開け小皿に盛ると、フウの目の前に置いた。


フウは座席がピーピーと鳴る椅子に座ると、いただきますと呟く。




「前にさ、俺考えてる事があるって言ったじゃん?」

「ちゃんと決心が固まったら教えてくれるって言ってたアレ?」

「そう、アレ」



ケンは働ききらない頭をコンコンと叩くと、珈琲を啜った。




「俺ね、カンナの祖父母の農家継ごうかなって思って。俺なりに色々調べてたんだ」



カンナの祖父母は米や野菜を作っており、それを直売所で販売していた。


その祖父母が少し前に亡くなった為、田畑は放置されているらしい。


ケンはそれを生かそうと考えていた。




「その方が自立出来るし生活も安定するし、地元には継ぐ家もあるし。それに俺は1人息子だから、親の面倒も見てやらなきゃだからね」


「…もしかして、あの時からずっと…1人で悩んでたの?」


「悩んでたってほどじゃないよ。ただ、キヨは妊婦だったから変な心配させたくなかっただけだよ」



少し納得のいかない顔をしているキヨの横で、おやつを食べていたフウはおやつ皿を凝視している。




「ケン、カンナと結婚する気になったの?」

「結婚は…まだ分からないや。でも、愛情や慰めなんかなくても一生カンナといるつもりだよ」



キヨはケンなりの精一杯の愛情を感じた。
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