続・祈りのいらない世界で
「カンナ、今ちょっといい?」



キヨ達がリビングにいる中、2階の自室にいたケンはカンナの部屋を訪れた。




「何?私、これから仕事なんだけど」

「すぐだから」



ドレッサーの前で化粧をしながらカンナはケンを招き入れた。


ケンはベッドの端に腰を掛ける。




「…カンナは、俺を好きだって言ってくれたよね。嬉しかったよ。キヨには一度も…好きとは言ってもらえなかったから」



カンナが鏡越しにケンを見ると、ケンは頭を下げて俯いていた。




「それにキヨはイノリ、カンナはカゼで、いつだって俺は余りもので…4人が結婚したら、俺だけ1人なんだなってずっと思ってたんだ。…みんなが幸せなら、それでもいいやって思ってたけど」



手に持っていたグロスを置くと、カンナはケンに抱きついた。




「…ごめんね、ケン。いつだって私はカゼばかりで、ケンとキヨが付き合ってる時も…キヨはイノリと幸せになって欲しいってずっと願ってたの。…最低ね、私は」


「ううん。それでいいんだよ。俺だってどこかでそう願ってたよ」



ケンは息を吐く。
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