続・祈りのいらない世界で
「…カンナ。今はまだ恋人だとか結婚だとかは考えられないけど、カンナとは一生一緒にいたいと思ってるよ。だから…」



カンナはケンから体を離すとケンを見つめた。


ケンの瞳はとても優しく揺れている。




「今はそれでいいかな?」

「…十分よ、ケン。ありがとう」



ケンと向き合えた時、カンナは自分の中でカゼが思い出になっていくのを感じた。




“………色々あったけど、俺が今好きなのはカンナだからね”


“私もよ、カゼ”



そのやり取りを最後に二度と帰ってこなかった人。


…あれから何年経ったのだろう。



今はもう、同じ事は言えない。




でも、悲しくは思わない。
寂しくも思わない。
恐くもない。



カゼとの思い出を、いつか忘れてしまっても

カゼを愛した証はフウと共に在り続ける。




そのフウと出来てしまった溝を埋めなくてはと、カンナは思った。






「はぁ〜…ケンとカンナ、フウまで地元に帰っちゃったから暇だなぁ…」



家事をひと通り終えたキヨは、昼寝をするヨウセイの横に寝そべっていた。


ケンとカンナは、これからの事をお互いの両親に話す為、フウを連れて地元に帰っていた。




「陽ちゃん起きないかな」



キヨはヨウセイの柔らかい頬を軽くつつくと、微笑んだ。
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