続・祈りのいらない世界で
「…可愛い。私とイノリの子…」



愛する人との間に出来た命がこんなに愛しいなんて…


この子の為なら、命だって捧げられる。


何より大切で、どんな事があっても絶対に守る。




我が子というのは、そんな初めての感情を抱かせてくれる存在。


だからこそ…



フウにちゃんと伝えなきゃならない事がある。





本当の母親になったキヨは、カンナとフウの関係をこのまま見過ごすワケにはいかないと強く思うようになっていた。






「…私はいつも何も出来ないなぁ。口先だけはいっちょ前なのに」

「何の話だ?」



仕事から帰ってきたイノリとソファに座っているキヨはポツリと呟いた。




「ケンとカンナ、上手くいってるでしょ?…でもそれは2人の力であって、あれこれ悩んでたクセに私は何も出来なかったなぁって思って」


「…お前がいなかったらフウがあんないい子に育たなかったよ。お前は何も出来なくない」



イノリに優しく頭を撫でられたキヨは、段々と涙がこみ上げてくるのを感じた。





「…イノリ…。私、もうフウのママじゃなくなってもいいかな?…カンナに…返してあげっ…」


「泣くな。フウのママはカンナであり、お前でもあるんだよ。…フウに向けていた愛情をヨウセイに全て与えればいい。寂しくなんかないよ」



声を押し殺して泣きじゃくるキヨを抱きしめると、イノリはキヨの背中をポンポンと優しく叩き始めた。





幼なじみ…
だからそばにいられた。


でも今は
二世帯の家族である。




家族のようで家族じゃない。



そんな関係は

いつまでも一緒にいられないのだと知った。
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